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クルミットです♪
『楽游原』第35話は、静けさの中に波紋が広がるような回でした。
太子となった李嶷(りぎょく)は、愛する崔琳(さいりん)とすれ違ったまま、
宮廷の思惑と義務に押しつぶされそうになります。
そして彼は、顧婉娘(こえんじょう)への“けじめ”として一つの真実を告げる――。
激しい戦の後に訪れた“心の戦場”が丁寧に描かれた一話です。
それでは第35話を一緒に見ていきましょう!
楽游原 第35話のあらすじ
崔琳の心はまだ氷のように冷たく、李嶷がどんなに寄り添おうとしても、
彼女は一瞥するだけで背を向けてしまいます。
「お前が怒るのは分かるが、話を聞いてくれ。」
そんな彼の必死の声も届かない――。
そこへ突然、顧婉娘が来訪。
李嶷は顔をしかめ、
「追い返せ!」と怒鳴ります。
しかし崔琳は微笑みを浮かべ、
「せっかく来たのだから、お通しして。」と命じました。
顧婉娘は静々と入室し、手には**自ら刺繍した“鴛鴦の枕”**を抱えています。
「殿下と太子妃のお眠りが安らかでありますように。」
崔琳は笑顔でそれを受け取り、さらに頼みます。
「この枕に合う屏風もお願いできるかしら?」
顧婉娘は一瞬言葉を失います。
――彼女の中で想定していた“嫉妬”の反応が全くない。
仕方なく「はい」と答え、退室しようとした時、李嶷が声を掛けました。
「屏風、早めに仕上げてくれ。」
顧婉娘の胸の中に浮かんだのは喜びではなく、痛みと屈辱。
この三人の場面、言葉よりも“沈黙”の圧が凄かったです。
崔琳の堂々とした態度が、顧婉娘にとって何よりの敗北でした。
その夜。
崔琳が眠っている傍らで、李嶷はそっと熱い薬湯を差し出します。
けれど、彼女は目を閉じたまま動かず。
李嶷はため息をつき、湯を置いてそっと椅子に腰を下ろしました。
灯火の光に照らされた崔琳の寝顔に、自然と微笑みが浮かびます。
「昔は、この顔が怒っていても可愛くて仕方なかったのに……」
彼が手を伸ばしかけた瞬間、崔琳が目を開けます。
「……なにしてるの?」
李嶷は慌てて立ち上がり、
「お前の寝顔を見ていただけだ。」
崔琳は無言で背を向け、再び眠りにつきました。
愛していても距離がある――
二人の静かな夜が、あまりにも寂しく映りました。
一方その頃、崔倚(さいい)は解散した崔家軍を思い、
川辺で一人釣り糸を垂らしていました。
釣りに興じながら、遠い日々を振り返ります。
「もしもう一度戦をするなら、どう構える?」
後ろから現れた若者が答えます。
「敵の動きを見極め、先を打ちます。」
その若者の名は――李嶷。
崔倚はどこかで聞いたことのある名だと首を傾げ、
二人は並んで釣りを続けながら、
亡き妻への想いと過去の栄光を静かに語り合います。
ここは一見何気ない場面ですが、
“父と娘婿”が知らずに心を通わせる象徴的なシーン。
過去の誇りと現在の孤独が交錯する名場面でした。
夜、屋敷に戻ると、崔琳は寝る準備を始めていました。
李嶷はためらいながら布団を持ち上げます。
「俺は下で寝る。」
崔琳は軽く眉を上げ、
「床は冷えるわ。これを。」と厚い布団を投げ渡します。
李嶷は少しの間沈黙し、
「……ありがとう。」とだけ言って、そのまま床に就きました。
翌日。
柳承鋒(りゅうしょうほう)が大牢で風寒にかかり、乱葬崗で焼かれたとの知らせが届きます。
崔琳は眉をひそめました。
「そんな都合のいい話、ある?」
彼女は何度も考えを巡らせ、
「柳承鋒は死んでいない。
“病死”は逃げるための嘘――きっとまた何か企んでいる。」
そして、案の定――
柳承鋒は生きていました。
その瞳には、まだ消えぬ執念の炎が宿っています。
復活する悪役は『楽游原』の十八番。
彼の再登場が物語を再び不穏に染めていきます。
その頃、顧相(こしょう)は太子府を訪れ、
「陛下も心配しておられる。なぜ良娣(りょうてい)の部屋に行かぬのか」と探りを入れます。
李嶷は冷静を装いながらも、
「その必要はない。」とだけ返しました。
しかし顧相は笑みを絶やさず、
「娘が不憫でのう。せめて食事でも共にしてやってくだされ。」
逃げ場をなくされた李嶷は、
仕方なく「今夜、顧婉娘の部屋で食を共にする」とあえて噂を流すことに。
ところが――崔琳の耳にもその話が届きます。
「今夜、太子殿下が良娣の部屋に?」
桃子は慌てて否定しようとしますが、
崔琳は静かに笑いました。
「ならば、行かせてあげなさい。
太子妃が嫉妬したと噂される方が面倒だもの。」
その夜、李嶷は約束通り顧婉娘の部屋へ。
部屋の中には香が焚かれ、温かい膳が整えられています。
李嶷は入るなり、侍女たちを下がらせました。
「婉娘、率直に話そう。」
顧婉娘の心臓が高鳴ります。
しかし、李嶷の口から出たのは冷静な言葉でした。
「私はあなたに男女の情はない。
あなたを巻き込みたくない。
けれど不自由な立場にさせた責任は取る。」
顧婉娘は唇を噛み締めながらも微笑み、
「……殿下のお優しさ、痛み入ります。」
李嶷は続けます。
「いつかあなたに本当に想う人が現れたら、
私は迷わずあなたを自由にする。」
顧婉娘は頭を下げ、涙をこぼしました。
李嶷のこの誠実さ。
政治の中で曇らぬ真心を見せる彼が、やっぱり“十七郎”のままだと感じました。
楽游原 第35話の感想まとめ
第35話は、戦の火は消えても人の心の火種は残り続ける――
そんな静かな緊張が続く回でした。
崔琳のプライドと寂しさ、
李嶷の優しさと不器用さ、
顧婉娘の誇りと痛み。
三人の感情がまるで三つ巴の糸のように絡み合い、
“誰も悪くないのに、誰も幸せになれない”という構図が際立ちます。
特にラストの李嶷の言葉――
「あなたを縛らない」――は、
男としても太子としても最高に誠実な告白でした。
崔倚と李嶷の“釣り”のシーン、そして柳承鋒の再登場が
次の嵐を暗示しています。
二人が穏やかに心を通わせる日は、まだ遠そうです。
次回、第36話――
柳承鋒の報復がついに動き出す。
愛と陰謀の狭間で、太子夫妻に新たな危機が迫ります。
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