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『楽游原』第20話は、李嶷(りぎょく)が「天下」と「愛」の狭間で苦しみながらも、
自らの感情を押し殺し、すべてを守るために頭を下げる回。
心優しき英雄が、政治の渦に飲み込まれながらも人としての誠を失わない姿に、胸を打たれます。
それでは第20話を一緒に見ていきましょう!
楽游原 第20話のあらすじ
顧婉娘(こえんじょう)は、李嶷の亡き母・劉氏(りゅうし)を思い出すために奔走します。
京中で劉氏を知る者を探し出し、ついに劉氏の肖像画を自らの手で刺繍。
完成した絵を差し出す顧婉娘に、李嶷は一瞬ためらいながらも受け取りました。
絹の上に微笑む母の姿を見つめ、彼の瞳に光が宿ります。
顧婉娘の想いは政治的な打算でもありましたが、その手刺繍には母を想う優しさが滲んでいました。
顧婉娘は静かに言います。
「陛下、母上の名を残すには、あなたが上に立つしかありません。」
李嶷はその言葉に小さく息をのむも、
何も返さず、ただ絵を抱きしめました。
一方、萧氏(しょうし)は李嶷との約束――
「太孫を見つければ、都攻略に協力する」――を思い出していました。
だが孫靖(そんせい)はまだ息があり、すべてが宙に浮いたまま。
新皇が即位し、政局が不安定な今、太孫を戻すのは危険。
萧氏は悩み抜いた末に決断します。
「……今はまだ、時ではない。」
彼女は信頼する将軍・韓暢へ密書を送り、
「太孫を守り、決して京へ急ぐな」と命じました。
戦の中でも人を想う萧氏の優しさに、胸が締めつけられました。
その頃、裴源(はいげん)は新たな命を受けて長州へ出陣する準備を進めていました。
ところがそこへ**信王(しんおう)**が割り込み、
「自分も同行する」と主張。
新皇はその申し出をあっさり承認してしまいます。
信王は野心家であるものの、無能なうえに軽率。
裴源はこの同行を「災いの種」と見抜いていました。
李嶷も状況を察し、
「このままでは長州が戦火に呑まれる」と判断。
そこで彼は、自分の母・劉氏の件を引き合いに出し、
あえて自ら非を認める形で新皇に頭を下げるという策を取ります。
「先帝と先皇后を軽んじたのは不敬でした。
どうか陛下の御心に従い、祭祀を行ってください。」
新皇は上機嫌になり、即座に赦免を言い渡しました。
さらに、「褒美として劉氏を妃に追封しよう」と発言。
こうして李嶷の思惑どおり、
信王は祭祀の準備に駆り出され、長州から離れることになります。
屈辱を呑んで笑う李嶷の姿――真の“政治の器”とはこういう人を言うのかもしれません。
その頃、泺陽では崔琳(さいりん)が李嶷のことを案じ、
こっそり彼の屋敷に忍び込みます。
彼の顔はやつれ、眉間の皺は深く刻まれていました。
「父上は……やはり母上を想っていなかった。」
そう呟く李嶷に、崔琳は何も言わず、そっと背後から抱きしめました。
「あなたはもう十分頑張ったわ。」
その声に導かれるように、李嶷は涙をこぼします。
戦場では強い彼も、この瞬間だけはひとりの息子に戻った――そんな柔らかさが胸を打ちました。
夜。
二人は湖畔に並んで座り、月を見上げます。
風が優しく吹き抜け、李嶷は囁くように言いました。
「俺は天下などいらない。欲しいのは……お前だけだ。」
崔琳は少し微笑み、
「あなたが欲しがらなくても、天下はあなたを放っておかないわ。」
その言葉に李嶷は静かにうなずき、
頭を崔琳の肩に預けます。
崔琳もその髪に指を通し、そっと唇を重ねました。
この穏やかな月夜のキスは、戦乱の中でようやく手に入れた小さな安らぎでした。
翌日。
李嶷が目を覚ますと、日はすでに高く昇っていました。
夢のような夜の記憶が曖昧なまま、
「……あれは夢だったのか?」と呟きます。
そこへ老鲍(ろうほう)が現れ、にやにやしながら言いました。
「殿下、昨夜はよほどいい夢を見られたようで。」
しかし謝長耳(しゃちょうじ)が横から口を挟みます。
「夢ではありません。昨日、桃子が確かにいらっしゃいました。」
李嶷は一瞬で顔を輝かせ、
馬を飛ばして城外の茶舗へ向かいました。
まるで少年のような表情――政治に疲れた彼の心が、ようやく人として温まる瞬間でした。
一方で、信王は長州出兵を断念したものの、
軍権を固めるためにわざと裴源の兵を減らすよう指示。
わずか三成の兵しか持たせず、さらに援軍も出さないという暴挙に出ます。
裴源は何度も上奏文を送りましたが、
すべて却下。
それどころか、都からは「自ら進んで敵を迎え撃て」との命令まで下ります。
危機的状況を知った李嶷は、
すぐに崔家軍へ援助を要請。
崔倚(さいい)は援軍を出しましたが、
その軍勢は長州の城内に駐屯――
つまり、名目上の“援軍”であり、実質は牽制のため。
これにより李嶷父子は板挟みに。
崔家軍が覇権を握るのではという不安が走ります。
新皇は焦り、ついに命を下します。
「李嶷、自ら長州へ赴け。」
再び最前線に立たされる李嶷――運命の歯車が、またも彼を戦場へと引き戻していきます。
楽游原 第20話の感想まとめ
第20話は、李嶷という人物の“度量”が光った一話でした。
父に見捨てられ、兄に妬まれ、それでも彼は笑って頭を下げる。
その姿は屈辱ではなく、「民と未来のための選択」でした。
崔琳との月下の抱擁と、翌朝の穏やかな笑顔――
嵐の中で見つけた一瞬の平和があまりに尊く、心に残ります。
次回はいよいよ長州決戦。
信王の陰謀、裴源の窮地、そして李嶷の決断――
すべての糸がひとつに結ばれる瞬間が、もうすぐ訪れます。
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